雪崩の掟
(2007/4/9 若林隆三著 信濃毎日新聞社)
雪崩学の学術的、体系的な本というよりは、過去の雪崩の分析および著者のコメントをまとめた本。
富士山特有の雪崩である雪代(スラッシュ雪崩) に1/3 以上を割いており、富士山に関わっていた時期がある身としては興味深く読めました。スラッシュ雪崩は富士山特有のスコリア層による凍土が引きおこしており、スコリア層がすべて流出してしまえばスラッシュ雪崩は起きなくなると指摘しています。そう考えると地質の変化によって雪崩が起きなくなる、またはその逆もあり得るということですね。
その他には、2006年に岳沢ヒュッテを吹き飛ばした雪崩、ヘルマン・ブールの死や大日岳雪庇崩落事故を雪庇の観点から分析しています。極度の低体温症患者に対する全身マッサージの危険性にも詳しく触れています。
ただし、著者の立場は最終章の "共生" からもわかるとおり、山の植生や普段の生活での飲み水は雪崩によって守られている面もあるので、雪崩を完全悪としてはとらえておらず、必要なものとしています。この立場は昔の著書『雪崩の世界から』の頃から一貫しており、変わっておりません。
最終章で
いずれにしても、温暖化で山の雪が増え、雪が暖かくなり、雪崩が増えるというストーリーが成立つ可能性は否定できない。と書いており、雪崩の世界にも温暖化の影響が出て来ているようです。
個人的には『雪崩の世界から』のほうが好きですが、小難しい雪崩関連の本の息抜きにどうぞ。
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