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[本]還るべき場所 - 笹本稜平

(2008/6/15 文藝春秋)


ここまで本格的にしっかり書けている山岳小説は「神々の山嶺」以来かもしれません。

K2東壁で亡くした彼女を求めて、再度トライするために K2 に戻ってきたクライマーの物語。

ただしメインの話はブロードピークにおける公募隊の遠征。公募隊とはいえ、8000m を越える高所登山であることは事実で、大変であることにも変わりはない。まるで登っているかと思わせるくらいにリアルな描画が凄い。それを巡る人間ドラマも絶妙。

他にもペースメーカーだったり酸素、フィックスロープ、シェルパ(HAP)、公募隊登山の問題もうまく盛り込んでおり、これを読むだけでその辺の問題点もすっきり理解できます。

「お金では買えない貴重なものをこの世界に残しておくのも、ぼくたちに課せられた義務じゃないでしょうか。それがなくなったら人は夢を見る機会を永遠に失います。K2の頂はそういうものの一つであるべきだと思うんです」

「人間は夢を食って生きる動物だ。夢を見る力を失った人生は地獄だ。夢はこの世界の不条理を忘れさせてくれる。夢はこの世界が生きるに値するものだと信じさせてくれる。そうやって自分を騙しおおせて死んでいけたら、それで本望だとわたしは思っている」

「『山がそこにあるから』というマロリーの言葉は、たぶんその答えではなく、それが回答不能な問いであることを示したにすぎないものです。それは言葉ではなく、生きることによってしか表現できない何かなんです」

「誰もが山に惹かれるわけじゃない。しかし現実の山じゃなくても、誰もが心のなかに山を持っている。それは言葉では定義できないが、どんなに苦しくても、むなしい努力に思えても、人はその頂を極めたいという願望から逃れられない」

「真の人生は不可視だ。それは生きてみることでしかかたちにできないなにかだ。そしてそれこそが、この世界で生きることを喜びに変えてくれる糧なんだ」

「死ぬ前にぜひK2の頂を踏みたい。これは勝つとか負けるとかの問題じゃない。長い人生で一度くらいは、魂の糧になるようなことをやってみたいんだよ。さもないとわたしは魂のレベルで飢えたまま死ぬことになる」

「自然は人間の敵じゃない。征服すべき対象でもない。我々にできるのは、その内懐で謙虚に遊ばせてもらうことだけだ。好きこのんで空気の薄い場所へ出かけていって、苦しいから酸素を吸わせてくれというのは虫がよすぎるんじゃないのかね」

「命なんてものはいずれ消えて無くなる。その終りにしても神ならぬ身には予測がつかない。そんなものを後生大事に抱え込んで暮らすより、使いたいように使って、自分が生まれた世界を謳歌したほうがいい」

「希望は向こうからやってくるとは限らない。迎えに行くのを待っている希望もある。前へ進めば、必ず開ける未来がある。金もなければ才覚もなかったこのわたしが。きょうまで生きながらえてきた唯一の理由は、絶望を禁忌としてきたことだ」

主人公ではなく、公募隊に参加してきた老人の発言が凄い。名言だらけで、ビジネス書と変わらない。

この著者の本を読むのは初めてであったが、これなら同時に買った天空への回廊も読むのが楽しみ。

重箱の隅
違和感があった箇所は 2カ所。冒頭のジョーゴ沢でのアイスクライミングでのロープワークの説明と瑞牆でのクライミングの描写。

二月の上旬には奥秩父瑞牆山周辺のロングルートをフリー・ソロで何本か登った。そこには五・一一aという国内ではほぼ最高難度の壁も含まれていた。

瑞牆周辺のルートのフリーソロはあり得なくはないけど、2月というのはあり得ない。また 5.11a というのは全然最高難度ではない。ここだけちょっと修正すれば不自然な箇所はない。もったいない。


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